カーラッピングの芸術

1. 適切な材料を使う

リフティングや車両表面からの飛び出しを防ぎ、きれいな状態を持続させるには、必ずキャスト塩ビを使用します。特に深い凹部と複雑な曲面では、キャスト塩ビが必須です。

2. グラフィックスを硬化させる

(注:着色塩ビの場合は、この手順は不要です。)

取付けを行う前に必ず、印刷されたグラフィックスにインクの残留溶媒が残っていないことを確かめます。グラフィックスが適切に硬化されていないと、エッジ部の収縮、凹部の飛び出し、および全体的な接着不良を招きます。フルカラー印刷されたグラフィックスは、取付けを行う前に72時間乾燥させます。印刷物は、印刷直後に垂直に吊り下げて乾燥させるか、緩く巻き上げて地面からわずかに離して持ち上げ、溶剤を落として除去することで乾燥させます。もし溶剤の強い刺激臭が残っている、あるいは印刷されていないフィルムよりも柔らかく感じる場合は、乾燥プロセスが十分ではなく、さらに乾燥させる必要があります。保護用オーバーラミネートの塗布前にも適切に乾燥させることが重要です。

3.下地を準備する

いかなるカーラッピングであれ、施工前には必ず車両がきれいであること、乾燥していること、ポリッシュ、グリース、舗装タール、オイル汚れやほこりなどの物質が混入していないことを確認します。以下の手順に従って、車両クリーニングを適切に行います。

手順1:市販の洗剤を水に溶かしたものを使い、ほこりや汚れを完全に取り除きます。グラフィックスの塗布を始める前に、車両を完全に乾かします。

手順2:エイブリィ・デニソンのサーフェイスクリーナーまたはイソプロピルアルコール(IPA)を使って、グリース、オイル、およびワックスを取り除きます。(注:いかなる溶媒を使用する際も、必ず目立たない箇所で確認を行ってから拭いてください。)

手順3:エイブリィ・デニソンのサーフェイスクリーナーまたはIPAに浸した布を使って車両を拭いたら、クリーナーが蒸発する前に、乾いたきれいな布で汚れを落とします。凹部やパネルの折返し部(例:ドア縁の内側)などの手が届きにくい箇所は、特に気を付けてクリーニングを行ってください。

4.道具を収集し、環境を制御する

必要な道具は以下の通りです。

  • フェルトまたはフェルトスキージー
  • メジャーおよび位置決め用マスキングテープ
  • Ÿ塗布用手袋とエア抜きツール
  • Ÿ塗布を補助し、ポストヒート処理を行うためのヒートガン

環境が適切であることを確認します。空気制御された清潔で乾燥している、ほこりのない屋内環境が望ましいと言えます。塗布するのに理想的な温度は15℃から25℃です。周囲温度および下地温度は10℃以上ある必要があります。温度が10℃以下の場合、接着剤の粘着性が弱く、接着剤が下地に接着しなかったり、フィルムが脆く塗布処理中に破れたりする可能性があります。一方で、25℃以上の非常に暑い環境では、接着剤の粘着性が非常に強くなるため、作業が難しくなります。フィルムはまた、非常に柔らかく、かつ伸びやすくなる傾向があります。(注:エイブリィ・デニソンのEasy Apply™接着剤は、乾式塗布の用途のみに使われます。)

施工は2人1組になって行います。まず、剥離紙が付いた状態でグラフィックスを車両に配置していきます。グラフィックスが車両と適合しているか、また電話番号などの重要な情報がドアの取っ手部分などの塩ビが切って取り外される箇所の上にきていないかを確認します。マスキングテープのタブを用いて、グラフィックスの位置を車両の上にマークし、フィルムから剥離紙を取り外します。フィルムの両端を2人がそれぞれ持ち、フィルムをぴんと張って、しわをなくします。そして、マスキングテープで記録したタブに合わせて、グラフィックスを再配置し、フィルムが車両の表面に軽く落ち着くようにします。スキージー作業は、車両の最も大きく、最も平坦なエリアから始めます。この時、中央から外に向かって、しっかりと上から覆いかぶさるようにスキージーで仕上げます。接着剤の種類によっては、1人が塩ビを車両の表面から離しながら、スキージーで圧力をかけていく必要のあるものがあります。エイブリィ・デニソンのEasy Apply™を使うと、フィルムを車両の表面から持ち上げることなく、表面に平たく貼り付け、スキージーがけを行うことが可能です。グラフィックスが平らに貼れたら、設定温度を低にしたヒートガンで熱を加えていきます。つなぎ目は、約35℃に加熱して柔らかくします。フィルムを加熱しすぎないでください。ヒートガンは動かしながら使用し、全体に熱が均等に行きわたるようにします。つなぎ目のフィルムは、スキージーまたは手袋をはめて手作業で慎重に作業します。この塗布プロセスが完了したら、ポストヒート処理が必要です。

5. 整えて仕上げる

エッジ部周辺のフィルムを整えて仕上げる際、車両の塗装を傷つけないように注意してください。きれいな直線で切断するには、必ずよく切れる新しい刃を使用します。

6. ポストヒート処理

凹部やパネルのエッジ部に沿ってフィルムを伸ばした場合は、必ずポストヒート処理が必要です。引き伸ばされたフィルムは、90℃まで加熱する必要があります。グラフィックスの塗布後は、接着剤が強度を増すまで少なくとも30分間時間を置きます。後熱処理を行うことで、引き伸ばされたフィルムの張力を緩和し、フィルムに新しい形状を記憶させることができます。

ポストヒート処理が十分でない、または全く施されていない場合、溝や凹部からフィルムが飛び出してくる可能性があります。赤外線温度計を使って、ポストヒート処理の温度を制御することを強くお勧めします。

ラッピング!

施工時の適切な手順を踏むことで、第二の皮膚のようにぴったりと貼られたカーラッピングが完成します。数日間かけて適切な準備を行えば、数年間はきれいな状態が持続します。そして何よりも、お客様に喜んでいただけるでしょう。

エイブリィ・デニソンのカーラッピング製品に関する詳細は、http://www.averydennison.jp/graphics/wrappingfilm/をご覧ください。