グラフィックを屋外に施した場合、グラフィックがさらされる環境は、グラフィックを経時的に劣化させる原因となります。定期的なクリーニングやメンテナンスが軽視されるケースが多々ありますが、それによりグラフィックの劣化は早まってしまいます。泥や埃、鳥のフン、大気汚染物質等が表面に定着した場合に定期的に除去しないと、最終的にはビニールに浸透してグラフィックが汚れたり見えにくくなったりする原因となります。
クリーニングの推奨頻度は、大まかに言ってグラフィックがさらされる環境次第となります。大気汚染物質が集中する汚染がひどい地域および/または海水のしぶきに長時間さらされる場合は、汚染がそれほどひどくない地域/場合よりもクリーニングの頻度を増すことが求められます。
一般的なクリーニング
クリーニングは、感圧粘着塩ビフィルムを貼り付けてから最初の48時間以内に行うべきではありません。
最善のクリーニング方法は、きれいな水とpH値が3-11の範囲のマイルドな洗浄液を混ぜたものを使い、仕上がったグラフィックを手洗いで洗浄することです。通常の場合、石油系蒸留物を含まない自動車用洗浄液やワックスを使い、表面の泥や埃をグラフィックから除去しつつ、次回以降の汚れ落としを簡単にするためワックスを少量残して沈着させるのが有効です。使用前に、メーカーの指示を読み、それに従ってください。
洗浄液が以下に当てはまることを確かめてください:
l 研磨剤が一切含まれていない
l 高度の酸性またはアルカリ性ではない(pHレベルが3から11の間)
l 強力な溶剤および/またはアルコールを含んでいない
洗浄液を使用する前に、グラフィックの目立たない部分で試し、グラフィックに適合するのかを常に確かめてください。使用前には、必ず警告ラベルやメーカーが提供している安全上の注意点を読み、それに従ってください。
洗浄液の多くは、プリントされたグラフィックがオーバーラミネートフィルムやクリアコートで保護されていない場合に、デジタル印刷インクに悪影響を及ぼしたり、インクが剥がれたりする可能性がある点に留意してください。
表面の汚れを取り除く
まず、水と洗剤を混ぜた洗浄液で洗浄する前に、表面のチリや泥、埃を水で洗い流します。
柔らかくてきれいなスポンジやクロスを使い、手洗いで汚れを落として、グラフィックを引っ掻いたりエッジを剥がしたりするリスクを最小限にとどめます。必ずグラフィックの上部から始めて底部の方へ順次作業を進めるようにしてください。洗浄後、きれいな水でグラフィックを再度洗い流し、空気乾燥させるかマイクロファイバークロスを使って手で拭き取り乾かします。
頑固な汚れを取り除く
頑固な汚れやシミは、上記で説明した洗浄後にもそのまま残ることがあります。その場合には、より強力な洗浄剤が必要となります。その際に使用可能なものには、柑橘系クリーナーやイソプロピルアルコールなどがあります。アセトンやメチルエチルケトン、トルエン、ペイントシンナー、ラッカーシンナーといった芳香性溶剤は、グラフィックに悪影響を及ぼす可能性があるため使用しないでください。使用前には必ずグラフィックのわずかな目立たない部分で個別に試して、洗浄剤の使用後は常にきれいな水で表面を洗浄してください。
高圧洗浄機の使用
高圧洗浄機は、注意して使用しなければなりません。最大圧は、1,200psi(80バールまたは84 kg/cm²)を超えないことが必須となります。サインやグラフィック表面からノズルまでの距離は、最低でも75センチとってください。グラフィック表面に対し、ノズルを垂直(90度プラスマイナス10度)に常時保って、ノズルの噴出角度が40度以上となるように確保します。圧力が強すぎたりノズルの噴射角度が鋭角すぎたりすると、エッジを剥がしてグラフィックに悪影響を及ぼし、深刻な場合にはフィルムを破損することがあります。
加温システムがある場合、水温が70度を超えないよう調整してください。高圧スチームクリーナーやターボ圧ノズルの使用は推奨しません。
海洋環境
海洋環境下では、ボート上や海水のしぶきにさらされやすい場所のグラフィックを頻繁に洗浄することが肝要です。塩ビフィルムは、水中に常時沈めて使用できるような仕様にはなっていません。ボートのグラフィックは、使用ごとにきれいな水(淡水)で洗浄することをお勧めします。
エイブリィ・デニソンでは、少なくとも月一回正しい手順に従ってすべてのグラフィックを洗浄するようお勧めしています。こうした作業により、グラフィックやサインがその使用耐久期間の全般にわたり望ましい外観を確実に保つようになります。
クリーニングとメンテナンスの詳しい内容については、エイブリィ・デニソンのグラフィックスウェブサイトで参照可能なInstructional Bulletins掲示板のリストを参考にしてください。