どのグレードの塩ビフィルムを使用するべきか、当社テクニカルマネージングディレクターのRalph Wordonからのアドバイス

感圧塩ビフィルムは、キャスト、ポリメリックカレンダー、モノメリックカレンダーの3種に分類されます。主な違いとそれぞれの利点を見てみましょう。

キャストフィルム

このプレミアムな高性能フィルムは、長期的耐久性と追従性に優れています。「キャスト(cast)」という言葉は、塩ビフィルムの製造工程を指します。原料は撹拌器の中で溶剤と混ぜ合わされ、一貫性のある液体混合物が作られます。

オルガノゾルとして知られるこの混合液は、その後キャストシート上に「注入」すなわち投入され、その後はいくつもの窯で処理されることで、溶剤を蒸発させます。溶剤が蒸発すると、乾燥した固体の「フィルム」がキャスティングシートの上にできあがります。その後粘着剤を塗布するためにキャスティングシートからフィルムをはがします。

カレンダー塩ビフィルム

カレンダー塩ビフィルムは、追従性がさほど重要でない比較的短期間の用途向けに使用され、コストパフォーマンスにも優れています。キャストフィルム同様、カレンダーフィルムも製造過程から名前がつけられています。また、中期(ポリメリック)または短期(モノメリック)カレンダー塩ビとも呼ばれます。

カレンダー塩ビフィルムの原料はキャストフィルムと似ています。原料を混ぜ合わせ、パン生地のような溶解状態となるまで加熱した後、金型に入れて押し出し、カレンダーローラー内を通過させます。研磨されたカレンダーローラーは、徐々に塩ビを絞って伸ばし、平らなシート状にします。

カレンダー工程は極めて速度が速く、大量生産に適していますが、カラーマッチ(特色)にはあまり向いていません。カレンダーフィルムの品質は、割安な短期用途(モノメリック)から中期用途(ポリメリック)まであり、耐久年数は6か月から5年です。

ここで3種の感圧型粘着塩ビフィルムの概要について検討してみます。

 

利点

不利点

典型的用途

 

 

 

キャストフィルム

寸法安定性あり

高コスト

長期使用看板グラフィック

最小限の収縮

 

車両ラッピング

長期耐久性

 

フリートマーキング

薄く追従性あり

 

船舶グラフィック

透過性あり、気泡ができにくい

 

 

優れた色の保持性

 

 

 

 

ポリメリックカレンダーフィルム

コストに比べて高い製造歩留まり

キャストフィルムより形状適合性に劣る。非常に複雑な形状の面には不適

一般的な看板

キャストフィルムより扱いやすく厚い

キャストより寸法安定性が低い

壁画

高耐摩耗

中期的耐久性

フリートマーキング

 

 

公共交通機関

 

 

平らな平面での車両の部分的ラッピング

 

 

モノメリックカレンダーフィルム

生産性に優れているため、安価

追従性が低いことで平面のみに適する

適したオーバーラミネートを使用したフロアグラフィック

厚みがあることで、アプリケーションペーパーを使わなくても扱いやすい

低寸法安定性

POP&POS

厚みがあることで、耐摩耗性に優れる

短期的耐久性

短期公共交通機関広告および一般的看板

一般に、最大の耐久性と追従性が求められる場合は、キャストフィルムをお選びください。耐久性はさほど重要ではなく、表面が平らまたは曲面がわずかなものであれば、ポリメリックカレンダーフィルムあるいはモノメリックカレンダーフィルムをお選びください。

用途に合った適切な素材を選ぶことで、お客様にご満足いただけ、再施工・加工の費用削減が可能となります。このシンプルなガイドラインに沿うことで、「ミスを軽減する」ことにつながります。

寄稿:グラフィックス・ソリューション(アジアパシフィック地域)テクニカル・マーケティング・マネージャー、Ralph Wordon